この記事でわかること
視覚障害の見え方の違いを知りたい、視覚障害のある方と保護者・教育関係者向けの記事です。ロービジョンの4つのタイプと、見えにくさを具体的に伝える方法がわかります。
視覚障害の多くは「まったく見えない」状態ではない
視覚障害と聞くと、光も感じない状態を思い浮かべる人がいます。実際には、見えてはいても生活に支障がある人のほうが多数を占めます。
厚生労働省の平成28年の調査では、在宅で視覚障害の身体障害者手帳を持つ人は31万2千人と推計されています。一方、日本眼科医会研究班は、良い方の目の視力が0.5未満の人を約164万人と推計しました。
この推計の内訳は、視力0.1以下の失明者が18万8千人、それ以外のロービジョン者が144万9千人です。推計上、視覚障害のある人の約9割はロービジョンにあたります。
推計上の「失明」は視力0.1以下を指す区分で、全盲と同じ意味ではありません。手帳の基準に届かないまま見えにくさを抱えている人も含まれます。
ロービジョンは矯正しても見えにくさが残る状態
ロービジョン(Low Vision)は、眼鏡やコンタクトレンズ、手術で矯正しても視力や視野の制限が残る状態です。日本語では弱視とも呼ばれます。
日常では次のような困りごとが起きます。
- 小さな文字が読めない
- 看板や案内表示の文字がぼやける
- 光がまぶしくて目を開けにくい
- 人の顔を判別しにくい
- 視野の一部が欠けて障害物に気づきにくい
同じ疾患でも見え方は一人ひとり違います。視力の数値が同じでも、困る場面は一致しません。
見えにくさの4つのタイプと見え方の違い
見えにくさは、視力・視野・光の感じ方の3つの軸で整理できます。ここでは代表的な4つのタイプを紹介します。
視力の低下|全体がぼやけて見える
近くも遠くもピントが合わず、視界がかすみます。小さな文字が読みにくく、色の境目も曖昧になります。
主な疾患例:白内障、糖尿病網膜症
視野の障害|見える範囲が欠ける・狭くなる
中心だけが残り、周辺が見えなくなる状態を求心性視野狭窄といいます。逆に中心が見えず周辺だけが残る状態は中心暗点と呼びます。
視力が保たれていても、段差や人の接近に気づきにくくなります。
主な疾患例:緑内障、網膜色素変性症、加齢黄斑変性
羞明(しゅうめい)|光を強くまぶしく感じる
わずかな光でも刺激が強く、目を開けていられなくなります。晴れた屋外や白い紙の反射で見えにくさが増します。
主な疾患例:網膜色素変性症、白皮症(アルビニズム)
夜盲(やもう)|暗い場所で見えにくくなる
明るい場所では見えても、暗くなると急に見えにくくなります。日没後の外出や、屋内から屋外への移動で困りやすくなります。
主な疾患例:網膜色素変性症、ビタミンA欠乏症
これらは単独でも複合しても現れます。網膜色素変性症のように、夜盲と視野狭窄が同時に進む疾患もあります。
色覚特性は視覚障害とは別の枠組み
色覚特性は、特定の色の組み合わせを区別しにくい状態です。視力や視野の低下を伴わない場合が多く、視覚障害の認定基準とは別に扱われます。
区別しにくい組み合わせには、赤と緑、青と紫、ピンクと灰色があります。色がまったく見えないわけではありません。
日本眼科医会によると、先天赤緑色覚異常の頻度は日本人男性の5パーセント、女性の0.2パーセントです。男性では20人に1人にあたります。
呼び方は複数あります。日本遺伝学会は2017年に「色覚多様性」という概念を提案しました。人によって色の見え方が異なること全体を指す考え方です。
見えにくさを伝えるとき、聞くときの具体策
見えにくい場面を具体的に聞く
「どのくらい見えますか」という質問は答えにくいものです。視力の数値を伝えても、相手には状況が伝わりません。
「どの場面で見えにくいですか」と場面を尋ねると、必要な対応がはっきりします。当事者から伝えるときも「暗い廊下で足元が見えにくい」と場面で示すと相手が動けます。
色以外の手がかりを添える
「赤い線を引いてください」は色だけに依存した指示です。「上から2番目の太い線」と伝えると、色の見え方に関係なく伝わります。
図やグラフは、形・模様・文字でも違いを示します。
明るさと逆光を調整する
羞明がある場合は、まぶしさを抑える位置や遮光眼鏡が助けになります。夜盲がある場合は、足元の明るさの確保が優先されます。
話す相手が窓を背にすると、逆光で表情が見えにくくなります。立つ位置を変えるだけで見やすさが変わります。
よくある質問
- Q1. 弱視とロービジョンは同じ意味ですか?
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福祉や教育の場では、ほぼ同じ意味で使われます。ただし眼科の診断名としての弱視は、子どもの視力の発達が止まった状態を指す別の意味です。文脈で区別されます。
- Q2. 見えにくさは進行しますか?
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疾患によって異なります。網膜色素変性症のように少しずつ進行するものもあれば、白内障のように手術で見え方が改善するものもあります。
同じ診断名でも進み方には個人差があります。経過は主治医に確認する内容になります。
まとめ:見え方の違いを知り、場面を具体的に聞く
視覚障害の見え方は人によって違います。この記事の要点は次の4点です。
- 推計上、視覚障害のある人の約9割はロービジョンにあたる
- 見えにくさは視力・視野・羞明・夜盲の4つに整理できる
- 色覚特性は視覚障害とは別の枠組みで扱われる
- 伝えるときも聞くときも、視力の数値ではなく場面を示す
見え方を場面で共有すると、必要な対応が具体的になります。

