この記事でわかること
合理的配慮の英語表現と、その言葉が示す考え方を知りたい、視覚障害のある学生と保護者・教育関係者向けの記事です。国ごとに使われる用語の違いと、日本語の「配慮」との意味のずれがわかります。
合理的配慮を表す2つの英語表現
合理的配慮を表す英語は、主に2つあります。使われる用語は、国や地域の法律によって異なります。
reasonable accommodation(アメリカで使われる表現)
reasonable accommodationは、アメリカで広く使われる表現です。1990年に成立したADA法(障害のあるアメリカ人法)の中心となる概念です。
- reasonable:合理的な、無理のない
- accommodation:便宜、調整、適応
直訳すると「無理のない範囲での調整」です。
Employers must provide reasonable accommodations to qualified employees with disabilities.
(雇用主は、障害のある適格な従業員に合理的配慮を提供しなければなりません。)
この表現が指すのは、思いやりではなく法律上の義務です。権利を実現するための調整措置という意味で使われます。
reasonable adjustment(イギリス・オーストラリアで使われる表現)
reasonable adjustmentは、イギリスやオーストラリアで使われる表現です。イギリスでは、2010年の平等法(Equality Act 2010)に規定があります。
adjustmentは「調整」や「適合」を意味します。accommodationよりも、制度やルールそのものを変える点に重きが置かれます。
Schools must make reasonable adjustments to ensure that students with disabilities are not disadvantaged.
(学校は、障害のある生徒が不利にならないよう合理的な調整を行う義務があります。)
教育現場や行政の制度における調整を指す場面が多くなります。
国・地域別の用語と根拠法
| 国・地域 | 主に使われる用語 | 根拠となる法律 |
|---|---|---|
| アメリカ | reasonable accommodation | ADA法(障害のあるアメリカ人法・1990年) |
| カナダ | duty to accommodate | 連邦・州の人権法 |
| イギリス | reasonable adjustment | 平等法(Equality Act 2010) |
| オーストラリア | reasonable adjustment | 障害者差別禁止法(Disability Discrimination Act 1992) |
日本語の「配慮」と英語表現で意味が違う点
日本語の「配慮」には、思いやりや気遣いという意味が含まれます。そのため、人の善意に頼る言葉として受け取られる場面があります。
英語のreasonable accommodationは違います。人権を保障するために、義務として行う制度的な対応を指します。
| 言葉 | 対応する英語 | 意味の中心 |
|---|---|---|
| 合理的配慮 | reasonable accommodation / reasonable adjustment | 法律上の義務。権利の保障 |
| 配慮(思いやり) | consideration / kindness | 個人の気持ち。義務ではない |
英語では、この2つは別の言葉として区別されます。「配慮」をconsiderationと訳すと、法律上の義務という意味が抜け落ちます。
障害者権利条約が定める合理的配慮
国連の障害者権利条約(CRPD)第2条は、合理的配慮を定義しています。日本は2014年にこの条約を批准しました。
条約の公定訳では、合理的配慮を「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整」と定義しています。
あわせて「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」という条件も定められています。
定義の中心にあるのは「平等」と「人権の行使」です。誰かの善意ではなく、平等を実現するための手段として位置づけられています。
よくある質問
- Q1. 合理的配慮を英語で説明するとき、どの表現を使いますか?
-
渡航先の法律で使われている用語に合わせます。アメリカではreasonable accommodationが通じます。イギリスやオーストラリアではreasonable adjustmentを使います。
どちらの表現でも、法律上の義務を指すという意味は伝わります。
- Q2. 日本の「合理的配慮」と海外の制度は同じ内容ですか?
-
対象となる場面や範囲は、国ごとに異なります。共通しているのは、障害のある人が不利にならないよう調整する義務がある点です。
具体的な内容は、渡航先の法律と学校の規定で決まります。
- Q3. 「reasonable」には、どこまで対応するという意味が含まれますか?
-
過度な負担にならない範囲、という意味です。学校や事業者の規模・費用によって、対応できる範囲が変わります。
障害者権利条約も「過度の負担を課さないもの」という条件を定めています。日本の障害者差別解消法にも同じ判断基準があります。
まとめ:配慮を「権利」の言葉で伝える
合理的配慮の英語表現は2つです。reasonable accommodationとreasonable adjustmentです。どちらも法律上の義務を指す言葉です。
日本語の「配慮」は、思いやりと結びつきやすい言葉です。海外の学校や職場に支援を求めるときは、権利として調整を求める言葉を使います。
留学や海外研修を検討するときは、渡航先の法律で使われている用語を先に確認します。用語がわかると、学校や支援機関に相談する内容が具体的になります。

