この記事でわかること
複数の立場が重なることで生じる困難を知りたい、視覚障害のある方と保護者・教育関係者向けの記事です。複合差別という言葉の意味と、困難が生じる仕組み、相談できる窓口がわかります。
「ダブルマイノリティ」と「複合差別」の違い
ダブルマイノリティが指すもの
ダブルマイノリティとは、少数派の立場を同時に複数もつ人を指す言葉です。視覚障害があり、かつ女性である場合がこれにあたります。視覚障害があり、かつLGBTQである場合も同じです。女性やLGBTQに限らず、外国にルーツを持つ場合などにも起こります。立場が重なると、社会的な不利や孤立が生じやすくなります。
制度や政策で使われる言葉は「複合差別」
行政や国連の文書では、この状態を「複合差別」と呼びます。障害による差別と、性別による差別が重なった状態を指します。障害のある女性の当事者団体に、DPI女性障害者ネットワークがあります。同団体は2012年に複合差別実態調査報告書を刊行しました。2023年には、その後10年の活動をまとめた報告書も刊行しています。情報を調べるときは「複合差別」で検索すると、資料にたどり着けます。
インターセクショナリティ(交差性)という考え方
複合差別を説明する学術用語に、インターセクショナリティがあります。日本語では「交差性」と訳されます。性別・障害・国籍などの属性が交わる地点で、固有の困難が生じるという考え方です。一つの属性だけを見ても、その困難は説明できません。
視覚障害と女性が重なるときに起きること
医療・健康の情報が手に入りにくい
妊娠・出産や婦人科に関する情報は、印刷物で提供される場面が多くあります。点字版や音声版が用意されていない場合、内容を自分で確認できません。必要な部分を家族や支援者に読んでもらう場面が生まれます。その結果、相談したい内容を他者に知られることになります。体調や性に関する相談ほど、この負担は大きくなります。
安全に関する相談がしづらくなる仕組み
視覚障害のある女性の安全については、当事者団体による調査が行われています。DPI女性障害者ネットワークの複合差別実態調査がその一つです。調査では、障害と性別の両方に関わる困難が報告されています。相談しづらさが生じる理由には、次の3つがあります。
- 相談窓口の場所や連絡先が、視覚的な情報だけで案内されている
- 相談機関までの移動に、手引きや同行が必要になる場合がある
- 支援や介助に関わる人が相手の場合、相談先と日常生活を切り離せない
この3つは、障害と性別のどちらか一方だけでは説明できません。相談できる窓口一覧を見る
視覚障害とLGBTQが重なるときに起きること
支援情報が視覚的な媒体で届けられている
性の多様性に関する啓発は、チラシやポスターで行われる場面があります。相談窓口の案内も、印刷物やウェブサイトの画像で示される場合があります。画像に代替テキストがない場合、スクリーンリーダーでは内容を読み取れません。支援の存在を知る手前で、情報が届かなくなります。
自分の状況を伝える相手を選びにくい
相手の表情や場の雰囲気は、視覚から得られる情報に含まれます。その情報が得にくいと、誰にどこまで話すかを判断する材料が減ります。視覚障害者のコミュニティは、人数が限られている地域もあります。話した内容が周囲に伝わることを心配する場面も生まれます。
支援の隙間が生まれる理由
制度が一つの属性を前提に設計されている
支援制度の多くは、障害者支援・女性支援・LGBTQ支援に分かれています。窓口も、制度ごとに別々に設置されています。複数の立場が重なる人は、どの窓口でも一部しか扱われません。障害者支援の窓口では、性別に関する相談の専門性が確保されていない場合があります。女性支援の窓口では、点字や音声での対応が整っていない場合があります。
国内外の制度での位置づけ
障害者権利条約の第6条は、障害のある女子について定めています。複合的な差別を受けていることを認め、締約国に措置を求める条文です。日本は2014年に障害者権利条約を批准しています。国内では障害者差別解消法が、障害を理由とする差別を禁じています。2024年4月からは、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務づけられました。障害者基本法などに複合差別の解消を明記する法改正が、当事者団体から求められています。
相談できる窓口一覧
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
性暴力に関する相談窓口です。全国共通番号の#8891に電話すると、最寄りのセンターにつながります。産婦人科医療やカウンセリング、法律相談の機関と連携しています。
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの詳細はこちら
SNS相談「Cure Time(キュアタイム)」
チャット形式で相談できる窓口です。年齢・性別・セクシュアリティを問わず、匿名で相談できます。受付時間は毎日17時から21時までです。
よりそいホットライン
24時間、通話料無料で相談できる電話窓口です。電話番号は0120-279-338です。福島県からは0120-279-226にかけます。音声ガイダンスで、相談したい内容を選ぶ形式です。DV・性暴力に関する女性専門ラインと、セクシュアルマイノリティラインがあります。
DPI女性障害者ネットワーク
障害のある女性による当事者団体です。複合差別に関する調査報告書を刊行しています。政策への提言や、報告書をもとにした学習会も行っています。
窓口の情報は2026年8月時点のものです。最新の受付時間は、各窓口のページで確認できます。
保護者・教育関係者ができること
案内は文字データでも用意する
チラシやポスターの内容を、テキストデータでも用意します。ウェブサイトの画像には、代替テキストを入れます。相談窓口の電話番号は、画像ではなく文字で記載します。
相談先を複数示す
一つの窓口だけを案内すると、相談内容によっては対応が届きません。障害・性別・セクシュアリティのそれぞれに対応する窓口を伝えます。本人がどれを使うかを選べる状態にします。
属性を前提に話を進めない
見えにくさの相談だと決めつけず、本人が話す内容から確認します。性別やセクシュアリティを推測して言葉を選ぶことは避けます。話す範囲は本人が決めるものとして扱います。
よくある質問
- Q1. 「ダブルマイノリティ」と「複合差別」はどちらを使えばよいですか?
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制度や支援について調べるときは「複合差別」を使います。行政資料や調査報告書は、この言葉で書かれています。日常の会話では「ダブルマイノリティ」も使われています。
- Q2. 相談したい内容が複数にまたがる場合、どこに連絡すればよいですか?
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よりそいホットラインは、内容を限定せずに相談を受け付けています。音声ガイダンスで内容を選ぶ形式です。話す中で専門のラインにつながる場合もあります。
- Q3. 学校の相談窓口に、視覚障害と性のことを同時に相談できますか?
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対応は学校によって異なります。点字か音声で資料がほしいと事前に伝えると、準備が進みます。学校外の窓口と併用することもできます。
まとめ:複合差別という言葉を手がかりに相談先を探す
視覚障害と女性・LGBTQという立場が重なると、既存の窓口だけでは対応が届きにくくなります。困難の原因は本人ではなく、制度が一つの属性を前提に設計されていることにあります。調べるときに「複合差別」という言葉を使うと、調査報告書や政策資料にたどり着けます。相談先は一つに絞らず、障害・性別・セクシュアリティのそれぞれの窓口を併用できます。連絡先を先に控えておくことが、必要になったときの行動につながります。

