はじめに
「視覚障害があるだけでも大変なのに、さらに“女性”や“LGBTQ”としての生きづらさも感じることがある」
「相談したいのに、どこに話していいのかわからない」
「支援制度はあるけれど、自分の“複数の特性”には当てはまっていない気がする…」
そんな声が、視覚障害をもつ女性や性的マイノリティの方々から、少しずつ聞かれるようになってきました。
この記事では、視覚障害を軸に、女性であること、LGBTQであることなど、複数の“マイノリティ性”が重なることによって起こる「ダブルマイノリティ」の現実と、その中でできる支援や配慮の在り方を考えていきます。
ダブルマイノリティとは?
「ダブルマイノリティ」とは、複数の少数派的立場(マイノリティ)を同時に持つ人々を指す言葉です。
- 視覚障害 × 女性
- 視覚障害 × LGBTQ(性的少数者)
- 視覚障害 × 外国にルーツを持つ
マイノリティ性が重なることで、社会的な不利や孤立感、支援の“隙間”に落ちやすくなるという課題があります。
視覚障害×女性が直面する課題
● 女性としてのニーズが見過ごされやすい
- 視覚障害者向けトイレに生理用品がない
- 点字で読める婦人科や妊娠・出産に関する情報誌が少ない
- 美容やファッションについての選択肢や情報が限られる
「視覚障害者の支援は男性基準」「性別に関係ないと思われている」
そんな見えない偏りが存在しています。
● 防犯・性暴力への不安が大きい
- 夜道や交通機関での不安
- 視覚情報が限られる中で、身を守る術を持ちにくい
- 相談できる場が見つからない/信頼できる人がいない
視覚障害のある女性の性被害は表面化しにくく、「声にならない声」が埋もれやすい現状があります。
視覚障害×LGBTQが抱える孤立感
● 「見た目で判断されない」はメリットでもあり、壁にもなる
- 相手の性別表現を見た目で確認できない不安
- 誰に自分のセクシュアリティを伝えるべきか判断しづらい
- 視覚障害者コミュニティの中でもカミングアウトしにくい空気
「自分はどこにも属せない」「障害者の中でも異質に感じる」
そんなダブルマイノリティならではの“疎外感”を抱く人もいます。
● LGBTQ向けの支援・啓発が“見えない”
- チラシや掲示物が文字のみ/視覚情報に依存しがち
- 性の多様性に関するワークショップや啓発が、視覚障害者にとってはアクセスしづらい
- 「見えないことで、自分の存在が透明にされているように感じる」ことも
なぜ「見えづらい支援」が生まれてしまうのか?
支援制度が“単一属性モデル”で作られている
多くの制度やサポートは、「障害者支援」や「女性支援」「LGBTQ支援」など一つの属性に向けて設計されています。
その結果、複数の要素をもつ人は、どこにも“ぴったり当てはまらない”と感じてしまうことが多いのです。
ダブルマイノリティに必要な視点とは?
- 「その人の背景は一つじゃない」ことを前提に支援を考える
- 本人の声を聞き、ニーズに合わせて制度を“組み合わせて”使える柔軟さを
- 「言い出せないかもしれない」という前提で、安心して話せる空気をつくる
「女性として」「LGBTQとして」「視覚障害者として」
ではなく、“その人”として関わることがすべての出発点になります。
小さな配慮が、誰かの「生きやすさ」になる
- 女性向けの医療情報を音声や点字でも用意する
- 支援者側が性的多様性についてのリテラシーを持つ
- 相談窓口や案内文に「どんな属性の方でも安心して相談できます」と明記する
- 視覚障害者のためのLGBTQ座談会や居場所づくりを促進する
大きな制度変更でなくても、ちょっとした言葉や態度で、安心はつくれます。

まとめ|「少数派の中の少数派」にも光を当てるために
視覚障害という見えにくさの中で、
さらに女性として、LGBTQとして、
“見えづらさ”と“語りづらさ”の二重の壁に向き合っている人たちがいます。
彼・彼女らの声は、小さく、届きにくいかもしれません。
でもその声に、「ちゃんと、あなたのことを考えているよ」という社会からの応答があることが、
一人ひとりの“生きやすさ”を支えていくのではないでしょうか。


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