1. はじめに
「大学に進学したいけれど、視覚に障害があっても受験できるの?」「どんな配慮が受けられるのか不安…」
そんな声を、視覚障害のある受験生やその保護者の方からよく聞きます。
近年は、障害のある受験生に対する「合理的配慮」が広く認められるようになり、試験内容や方法について柔軟な対応が可能になっています。
この記事では、視覚障害のある受験生が大学進学を目指す際に知っておくべき
- 大学入試の種類と特徴
- 合理的配慮の内容
- 申請手続きの流れ
- 相談・準備の注意点
を、初めての方にも分かりやすく解説します。
2. 大学入試の種類と、それぞれの特徴
現在の大学入試は、主に次の4つの方式に分かれています。それぞれに特徴があるため、受験生の状況や得意分野に合わせて選択することが大切です。
2-1. 大学入学共通テスト
- 毎年1月に実施される全国一斉の学力試験
- 主に国公立大学の一般選抜で利用される
- 私立大学でも利用できる大学多数あり
- マーク式が基本(記述式は2021年度以降廃止)
視覚障害のある受験生は、大学入試センターに事前申請することで、以下の配慮が受けられます。
- 試験時間の延長(1.3~1.5倍)
- 点字や拡大文字の問題冊子の提供
- 音声データでの問題読み上げ
- 解答方法の変更(口述・代筆など)
- 個別会場の設定(静かな環境、電源確保など)
注意点: 申請の締切は高校を通じて6~7月上旬に行われるため、かなり早めの準備が必要です。
2-2. 総合型選抜(旧AO入試)
- 主に9月~11月に実施
- 書類審査、面接、小論文、プレゼンなどで評価
- 学力試験は実施しない大学も多い
- 高校での活動や熱意、個性が重視される
配慮が必要な場面の例:
- 面接時の質問方法の調整や、資料提示のサポート
- 提出課題の代替形式(点字、音声ファイルなど)
注意点: 提出書類や形式に関する変更は、大学との事前相談が必要不可欠です。
2-3. 学校推薦型選抜(指定校推薦・公募推薦)
- 主に11月〜12月に実施
- 高校の推薦を受けて出願
- 調査書、小論文、面接などで評価
面接や書類提出時に配慮が必要なケースでは、大学側への相談が大切です。
2-4. 一般選抜(一般入試)
- 国公立大学は前期(2月下旬)、後期(3月上旬)
- 私立大学は1月末~2月にピーク
- 筆記試験(記述式またはマーク式)が中心
合理的配慮の内容は大学ごとに異なりますが、共通テストと同様に以下の配慮が可能な場合があります。
- 拡大文字・点字・音声対応の問題用紙
- 試験時間延長
- 解答方法の変更(PC、代筆、口述など)
- 試験会場の個別設定
3. 合理的配慮とは?~その目的と誤解されがちなポイント~
合理的配慮とは、「障害のある受験生が他の受験生と同じスタートラインに立つために、環境や方法を調整すること」です。
大切な3つの原則
- 合理的配慮は「相談」によって決まる
大学や試験主催者に申請し、受験生の状況をもとに個別に配慮の内容が決定されます。 - すべての希望が通るとは限らない
希望した配慮がすべて認められるわけではなく、大学の体制や試験の公正性を考慮して、妥当な範囲で調整されます。 - 配慮は「有利にするため」ではない
合理的配慮は、あくまで「平等な機会を保障するための手段」です。
他の受験生より優位に立つための“特別扱い”ではありません。
4. 配慮を受けるための手続きの流れ
配慮を希望する場合は、入試要項に記載された「受験上の配慮申請」の手続きを行う必要があります。
一般的な流れ:
- 大学または試験主催者に相談
(入試課、障害学生支援室など) - 必要書類を提出
・医師の診断書
・身体障害者手帳の写し
・配慮申請書(所定の様式) - 審査・確認
大学側が受験生の状況と希望内容を確認し、配慮の可否や内容を決定 - 通知・打ち合わせ
受験前に配慮の内容が通知され、場合によっては当日の流れを事前確認 - 試験当日、決定された内容に基づいて受験
5. 大学との事前相談が合格への第一歩
相談は「迷ったら早めに」が鉄則!
配慮の申請には、手間も時間もかかります。
特に共通テストは夏前から準備開始となるため、進路がはっきり決まっていなくても、「相談だけはしておく」ことを強くおすすめします。
どこに相談すればいいの?
- 高校の先生(進路指導・特別支援担当)
- 志望大学の入試課・障害学生支援室
- 各地の進学支援団体・視覚障害者団体
6. まとめ:自分らしく受験に臨むために
視覚障害があっても、大学進学をあきらめる必要はありません。
- 合理的配慮は、すべての受験生に平等な機会を与えるためのもの
- 配慮は大学との対話の中で決まり、内容には上限もある
だからこそ「早めに知る・動く」ことが何より大切です。
受験は不安も多いかもしれませんが、自分の力を発揮できるよう、しっかりと準備を整えていきましょう。
この記事が、視覚障害のある受験生やご家族にとって、進学への一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。
「どの入試方式が合っている?」「どんな配慮をお願いできるの?」
そんな疑問や不安があれば、どうぞお気軽にご連絡ください。



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