この記事でわかること
弱視で一般校に通いながら受験を進めたい、視覚障害のある小・中・高校生と保護者・教育関係者向けの記事です。座談会に参加した大学1年生の実体験から、学校段階ごとに申請した配慮の内容と、推薦入試を選んだ理由がわかります。
座談会の開催概要
| イベント名 | 第5回 先輩に聞いてみよう!「弱視×受験 〜中学・高校・大学進学のリアル〜」 |
|---|---|
| 開催日 | 2026年8月30日(日)19:00〜21:00 |
| 開催形式 | オンライン(Zoom) |
| テーマ | 弱視のある学生の受験と学校生活 |
| 参加者 | 弱視のある大学1年生1名 |
登場する先輩の紹介
菊池 空蘭虹(きくち くらに)さん/法政大学 現代福祉学部 福祉コミュニティ学科 1年
東京都出身。先天性緑内障による弱視です。視力は右が0.03程度、左が0.1程度になっています。周り全体はなんとなく見えていて、近くの小さい文字と遠くの文字が見えにくい見え方です。駅の案内表示は、近づいて背伸びしてぎりぎり見えるか見えないかといいます。見えないときはスマホのカメラで撮影して確認しています。
笹原小学校(通常学級と弱視学級を週2回)、桜丘中学校を経て、都立田園調布高校へ推薦入試で進学しました。現在は法政大学現代福祉学部福祉コミュニティ学科の1年生です(指定校推薦)。社会福祉士・精神保健福祉士の国家資格を目指しています。
学校段階ごとに受けた配慮の全体像
菊池さんは、小学校から大学まで一般校で学んできました。受けた配慮は学校段階ごとに変わっています。
| 段階 | 学習面の配慮 | 試験の配慮 | 主な相談先 |
|---|---|---|---|
| 小学校 | 弱視学級で補助具の使い方を習得、授業中の読み上げ、体育の付き添い | 時間延長は利用していない | 担任・弱視学級の教員 |
| 中学校 | 前方の座席、ロッカーの貸与、コンセントの使用 | 別室受験、時間延長 | 弱視学級の教員・先輩 |
| 高校 | 体育の評価方法とルールの変更、家庭科の補助 | 時間延長1.5倍 | 担任・校長 |
| 大学 | 授業スライドの事前送付 | 時間延長1.5倍 | 障害学生支援室 |
配慮の内容は本人の申請にもとづいて決まります。学校や年度によって対応は異なるため、ここに挙げたものは菊池さんが在籍した当時の内容です。
本文で登場する補助具は次のとおりです。
- 拡大読書機:カメラで文字を写して画面に拡大表示する機器。据置型と持ち運び型がある
- 書見台:本やプリントを傾けて固定する台。顔を近づけて読むときの姿勢を助ける
- 単眼鏡:片目で使う小型の望遠鏡。黒板や案内表示など遠くを見るときに使う
小学校・中学校:弱視学級で身につけた道具と、なくなってからの工夫
弱視学級が併設された小学校を両親が選んだ
小学校は両親の意思で通常学級を選びました。盲学校の見学もしています。体験入学のとき、一番前の席でも黒板の文字が見えませんでした。そこで両親は、弱視学級が併設された東京都世田谷区の笹原小学校を選んでいます。
弱視学級では、ルーペ・単眼鏡・書見台の使い方を教わりました。拡大読書機は入学時から使い、iPadは小学1年生の終わりごろから使い始めています。週2回、午後の授業を抜けて弱視学級の教室に移動しました。
低学年のうちは通常の授業にサポートの人がつき、黒板の文字を読み上げてもらいました。高学年になると、授業のサポートは体育だけになりました。
菊池さんの学年で弱視学級を利用していたのは本人だけです。ほかの学年には1人から5人程度が在籍していました。その多くは都内のほかの小学校に通いながら、週1〜2回だけ笹原小学校の弱視学級に通っていたといいます。
学校外では、神奈川の盲学校で開かれていたボルダリング教室のコミュニティに参加しました。そこで盲学校に通う子どもたちと関わっています。
担任が学年の子に説明したことで、友達の理解が広がった
1年生のときの担任は、放課後にiPadの使い方を一緒に確認してくれました。同じ学年の子どもたちへの働きかけも早い段階から行われています。
菊池さん:同じ学年の子たちに、私が使っている拡大読書機を、いつも教室に置きっぱなしに、大きくて持ち歩けないので置きっぱなしにしてたんですけど、「すごい大事なものなんだよ」とか「困ってたら助けてあげるんだよ」とか、1年生のうちからすごいそういうことを学年の子たちに言ってくれてたおかげで、友達とかもすごい理解があって、すごい助けてくれたからやりやすかったし。
菊池さん:近くに先生がいても別に変な目で見られないっていうか、「サポートしてもらってるんだな」ってみんな理解してくれて、自然に他の子たちもサポートしてくれるみたいな感じの流れに繋がってくれてたから、よかったかなって思ってます。
体育は見学せずに参加した
体育では、ボールを使う種目のときにサポートの先生がそばにつきました。ダンスの授業では、目の前で見本を見せてもらっています。
菊池さん:私もあんまり見学はしたくなくて、無理やりにでも大体は出てたなっていう感じ。体育の授業が好きだったわけじゃないんですけど、諦めるのが悔しくて入ってました。
中学受験では盲学校・私立・地元中学のあいだで揺れた
中学受験を考えたのは小学5年生のころです。周りの友達が中学受験をしていたことがきっかけでした。当初は盲学校の受験を予定し、家庭教師をつけて過去問に取り組んでいます。志望先が変わったのは学校見学のあとです。
菊池さん:学校見学に行った時に、なんかやっぱ合わないかもなってなっちゃって。先生がたまたまだと思うんですけど、私は怖いなって思っちゃって。そんなのどこの学校の先生も多分怖いんですけど、その時の私は「なんかもう盲学校いいや」ってなっちゃって。
次に志望したのは、弱視学級の先輩が進学した私立中学です。同じ道をたどれば周囲の理解を得やすいという判断でした。一般入試(面接・国語・算数)を受けて合格しています。ただし進学先は地元の中学校になりました。
決め手は3点です。
- 私立は学費がかかる
- 小学校から続けていたピアノを続けたい
- 地元の中学校でも小学校からの情報提供が期待できる
菊池さん:揺れてました。なんかどこ行けばいいか自分でも分かんなかった。多分親も分かんなかった。だからみんなで迷ってました。
弱視学級のない中学校で、道具をそろえ直した
中学校には弱視学級がありませんでした。小学校では弱視学級から道具を借りていたため、両親と相談して拡大読書機と書見台を自費で購入しています。
道具の使い分けも変えました。小学校では手元も遠くも拡大読書機を使っていました。中学校では、遠くを見るのは拡大読書機、手元はルーペと書見台という分担にしています。
席は前から1番目か2番目で、コンセントが届く端に配置してもらいました。道具を置くロッカーも借りています。入学前には校長と保護者を交えて面談し、必要な配慮を確認しました。
配慮の内容は、弱視学級の先輩が受けていたものを参考に決めています。
菊池さん:まず配慮内容は、今まで弱視学級があって先生たちがすごいやってくれてたから、自分たちでも何をやってもらえばいいかよく分からなかったので、弱視学級の先輩、それこそ受験したところに行った先輩を参考にして、その先輩がどういう配慮をしてもらってるのかっていうのを結構教えてもらって、私も同じような感じでやったっていうのがあるんですけど。
試験は別室受験になり、時間延長も受けられるようになりました。当初は書見台とルーペだけで受けていましたが、首や肩が疲れるという課題がありました。中学3年生から、持ち運び用の拡大読書機を購入して試験に使っています。
通っていた中学校では、試験時間の延長は無制限でした。時間をかけて最後まで解けたため、成績は取れていたと振り返っています。時間延長の運用は学校ごとに異なるため、同じ対応が受けられるとは限りません。
付き添いのいない球技が一番大変だった
中学校では体育の付き添いがなくなりました。この変化が大きな壁になっています。
菊池さん:何をするにしても、球技だと見えないから。今までは近くに誰か先生がいて、例えばドッジボールだったら代わりにキャッチしてもらうことが多かったんですよ。だけど付き添いの人がいないと代わりにキャッチしてもらえないから、例えばバレーボールとかバスケットボールとかだと、ただそこにいるだけとかになっちゃったりとか。ボールが一瞬見えても、本当に一瞬だし、キャッチが怖くてできないから避けちゃうんですよ。
菊池さん:だから一応他の子たちも「しょうがないか」みたいな感じではなってると思うんですけど、そこだけなんか申し訳ないなっていうのと、なんかつまんないなっていうので。
家庭科部での活動と、コロナ禍での自己紹介
部活は家庭科部に入りました。運動部は選択肢になく、興味のある文化部を選んだ形です。裁縫は拡大読書機を使っても難しく、顧問の判断で料理や地域訪問が中心になりました。近くの幼稚園・保育園を訪問し、絵本の読み聞かせなども行っています。
入学した年はコロナ禍と重なり、入学式が6月ごろになりました。分散登校の時期と全員がそろってからの2回、自己紹介の機会があったといいます。教員からの説明も行われました。
菊池さん:元から理解ある子たちがサポートしてくれてるのを他の子たちが見て、「こんな風にやればいいんだ」って感じで多分伝わったのかなっていうのはあると思う。
高校受験:1.5倍の壁と、推薦入試という選択
一般入試の時間延長では間に合わないと気づいた
中学3年生から模試が始まりました。この時期に、首が疲れないよう持ち運び用の拡大読書機を購入しています。
課題になったのは時間です。中学校の定期テストは無制限でしたが、一般入試の延長は1.5倍でした。学校の教員とも状況を共有し、定期テストで1.5倍の練習を始めています。無制限で解きつつ、1.5倍の時点でどこまで解けたかに印をつける方法です。
菊池さん:模試が時々学校であって、あと外部でもあるんですけど、模試も1.5倍でやるんですけど、すごい長い。5教科やると長いし、1日使っちゃうから、疲れちゃう。拡大読書機を使ってても疲れちゃうし、全然時間足りないっていうので。すごいなんか、そこはどう考えても「これは一般でいけるのかな」って、中3の最初、夏ぐらいに多分不安になってたっていう感じ。
推薦入試を選択肢として考え始めたのは、中学3年生の初めごろです。
都立を第一志望にした理由
志望先の絞り込みでは、配慮の申請が通るかどうかを重視しました。私立高校では、教員の人数を理由に別室受験が難しいと言われたところもあったといいます。
菊池さん:都立は多分大体どこに行っても、同じ都でやってる高校だから、どんな配慮内容をこちらでお願いしても大体通るんですよ、できる限り。私立だとたまに「こういうのは無理です」って結構言われるところが多いから。
併願先は1校選ぶ必要がありました。最も対応を検討してくれた近くの女子校を選んでいます。時間延長や別室受験は難しいものの、iPadに試験データを入れる方法なら検討できると伝えられたためです。私立高校の対応は学校ごとに異なり、これは受験当時に個別の学校から示された内容です。
都立田園調布高校を選んだ理由
第一志望を決めたのは中学3年生の10月ごろです。決め手は、体育が活発でないことと校則でした。
菊池さん:絶対に校庭が狭かったら、そんなに活発なことしないし、体育系の部活が盛んじゃなかったら、そんなにワイワイしてる人もいないし、私には合ってるんじゃないかなって思って。
菊池さん:あと、中学校がすごい校則が緩かったんですよ。私服で行ってもいいとか髪染めしてもいいとか、そういうところだったので、校則がきついのも嫌だったので。都立の田園調布高校が「髪染めはダメだけど私服登校はOK」とかだったので、それならちょうどいいじゃんっていうので、そこを狙って。
推薦入試で申請した配慮
推薦入試の内容は小論文と面接でした。受験当時の推薦の倍率は4倍程度です。申請した配慮は次の4点です。
- 小論文の時間を1.5倍にする
- 面接会場の近くまで案内する
- 付き添いの人が同伴する
- 拡大読書機とルーペを持ち込む
拡大読書機が大きいため、机を2個とコンセントも借りています。入試内容・倍率・配慮はいずれも受験当時のものです。出願前に最新の募集要項を確認してください。
配慮内容の相談先は、中学校ではなく小学校の弱視学級でした。
菊池さん:なんか学校がもうあんまり分かってないから、私と母親と、あとはあれですね、弱視学級の先生たちとまだつながりはあったし、近くに小学校があるので、そこに相談しに行ったりとか、そこの先生たちに相談しに行ったりとか。あとは先輩に聞いたりとかして、どんな配慮内容がいいのかとかを全部聞いてやった感じです。
小論文と面接の対策
小論文は対策本を購入し、塾で添削を受けました。中心になったのは学校の国語教員です。お手本の文章を繰り返し読み、推薦の過去問から構成を組み立てました。同じく都立の推薦を目指す友人とも一緒に勉強しています。
面接は校内の練習制度を利用しました。対策本の質問に答えを書いて暗記し、担任と話す練習を重ねています。11月から12月にかけては、ほぼ毎週練習していたと振り返っています。
菊池さん:あとは、面接はやっぱりそこは、見えないからこそ「見えないけど大丈夫?」みたいな質問もされるだろうなっていうのを想定して、見えないからこその質問も答えられるようにとかやってました。
見え方に関する質問の想定には、中学受験のときの経験が生きました。同じ弱視学級の先輩から、面接で聞かれた内容を事前に教わっていたためです。
高校生活:中学より手厚かった支援と、3観点の成績評価
推薦入試で合格し、都立田園調布高校に進学しました。入学前には、担任になる可能性のある教員・校長・保護者を交えた面談を行っています。個別の学校見学も実施し、拡大読書機を置く場所やロッカーの確保を事前に決めました。
高校には弱視学級とのつながりがありません。入学時の配慮は中学校と同じ内容から始め、入学後に調整を重ねています。
体育では評価方法とルールを変更してもらった
菊池さんが予想外だったのは、支援が中学校より手厚かったことです。
菊池さん:意外と高校に入って、中学校の時より支援が手厚かったんですよ。
菊池さん:例えば体育とかだと、もともとあんまり体育が盛んじゃないところを選んだので、少人数クラスで体育だったので、男女結構分かれてたりとかして。その中でも私ができることを代わりに、球技とかだと、みんながパス練習とか、パスでテストするとかいう時に、私はキャッチができないから、代わりに他のことで点数をつけてもらうとか、そういう工夫をしてもらった。
ほかにも、ワンバウンドを認めるルール変更や、教員がペアに入る対応がとられました。友人と2人で1人分として扱う形の調整もあったといいます。家庭科の裁縫も教員の補助を受けています。
定期テストは1.5倍になり、3観点評価が成績を支えた
高校の定期テストは1.5倍の延長になりました。中学校の無制限に慣れていたため、最後まで解けないことが増えています。成績は5段階でおおむね4か5、体育は3でした。
成績を支えたのは、テスト以外の評価軸です。現在の高校では、知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度の3観点で評価されます。
菊池さん:100%の中にその3つの評価がバランスよく入ってるから、テストだけできても逆にあんまり、低くなっちゃうしっていうシステムなんですね、今の成績のつけ方が。だから逆によかったかなっていう。テストはちょっと失敗しちゃっても、提出物とか態度でなんとか取れたりするから。
大学受験:高校入学前から指定校推薦を狙う
志望校が決まる前から成績を積み上げた
大学受験の方針は、高校受験の時点で固まっていました。一般入試では時間が足りないという判断から、指定校推薦の枠がある高校を選んでいます。
菊池さん:最初から成績を取るつもりでいたので、最初の時点では多分どこの大学とか、どんなことを学びたいかとかは分かんないまま、とりあえず成績だけ高1とかは取ってて、頑張って取るようにしていて。
高校2年の文理選択では、母や祖母が看護師・栄養士の資格を持つことから理系を志望しました。
障害学生支援室の有無で志望先を絞った
大学には、障害のある学生を支援する部署が設置されているところがあります。名称は大学によって異なり、障害学生支援室と呼ばれることが多くあります。設置していない大学では、学生支援課や教務が相談の入り口になることが一般的です。
菊池さんはオープンキャンパスで相談し、対応が難しいと伝えられた大学もあったといいます。
菊池さん:支援室がないところだと、オープンキャンパスでちょっと相談してみたときに、なんか「ちょっと無理かも」って感じで言われちゃったりするところもあったので、そこは「じゃあ絶対行かないよ」ってなって。
理学療法士を目指せる筑波技術大学にも足を運びました。自宅から遠く、一人暮らしを選ばなかったため志望を見送っています。看護は妹と看護体験に参加し、細かい作業の多さから断念しました。
理系から文転して、法政大学現代福祉学部へ
高校3年で文転しました。福祉と心理の両方に関心があり、国家資格が取れることを条件に絞り込んでいます。
心理学は指定校の枠が少なく、確保できる見込みが立ちませんでした。そこで選んだのが法政大学現代福祉学部です。
菊池さん:同じ学部の中に、私は福祉所属なんですけど、心理を専門にする学科もあるんですね。だから同じ学部の中にあれば、授業を横断して取りやすいっていうのも聞いてたので。それだったら別に、趣味程度に心理学を学べれば私は多分満足できるから、福祉の国家資格を目指しながら心理学も学ぼうっていうので、そこに決める、最後の最後らへんに。
推薦対策は高校2年の終わりから始めています。志望校が決まる前の段階では、心理と福祉のどちらにも当てはまる志望理由の「型」を塾の教員と作成しました。
塾はオンラインの個別指導を選んでいます。中学時代の対面の個別塾は拡大読書機を持ち込めない広さで、単眼鏡とルーペでの受講が負担になったためです。
指定校推薦の選考と、想像を超えた配慮
指定校推薦は校内選考から始まります。校内の成績順で枠が決まる方式です。通過後、大学へ志望理由書を提出し、面接を受けました。志望理由書は塾の教員と作成しています。
申請した配慮は、拡大読書機の使用、1.5倍の時間延長、付き添いの人、道具の持ち込みです。面接では、事前の申請を受けた大学側の対応が想定を超えていました。
菊池さん:教室の前でノックして、ノックして扉を開けた時に、目の前に人がいてびっくりしたんですけど、目の前に人がいて、肩を貸してくれるっていうので、一応肩を貸してもらって。目の前に椅子があるのが私は見えてたんですけど、その椅子の横まで連れてってくれてやってくれたんですけど。
菊池さん:その時点で私はパニックだったんですけど。でもその優しさ、なんか迷うじゃないですか、そっからもう反対の向こう側に移動するか、そこで留まってお辞儀を始めるか、すごい迷っちゃって。でも優しさを無にするわけにもいかないなって思って、そのままそっから始めました。
椅子の左右どちらに立つかという想定と、案内された位置が逆だったための混乱です。
大学生活:iPad中心の学びと、支援室の活用
入学準備と通学の練習
合格が決まったのは12月ごろです。入学までに大学から出された課題に取り組みました。
英語のクラス分けは、オンラインで受けるテストの結果を参考にする方式でした。全員が同じシステムで受けるため、時間延長ができません。事前に相談し、取得済みの英検のスコアを代わりに提出しています。大学での相談窓口は障害学生支援室です。
通学の練習は、入学前の相談通いが兼ねる形になりました。
菊池さん:練習、入学前に母親と一緒に、結構練習っていうか、支援室に相談に事前に結構行ってたんですよ。だからそれが自然に練習になってたって感じではあると思うんですけど、それで一緒に行ってました。
入学後、母親が同行したのは最初の3日ほどです。
拡大読書機からiPad中心へ
大学では教室移動が多く、拡大読書機の持ち運びが負担になりました。試験のときだけ拡大読書機を使い、普段はiPadで対応しています。
菊池さん:スライドを事前に送ってもらって、それで手元でスライドを見ながら。黒板はあんまり先生たち書かないし、書いたとしても写真を撮れば追いつく範囲だから。書見台は一応持ち歩いてて、リュックに入れてて、それだけちょっと邪魔ではあるんですけど、仕方ないっていうのでやって。試験も1.5倍でやってもらってる感じで。
学んでいる内容と、これから
現在は福祉コミュニティ学科で、福祉制度や地域づくりを学んでいます。社会福祉士・精神保健福祉士の国家資格が目標です。関心のあった心理の授業や、第二外国語のフランス語も履修しています。
卒業後の進路は検討中です。
菊池さん:福祉の国家資格に行くなら、なんか事務職とかになっちゃうのかなって思ってるんですけど、でも私は今、事務職、パソコンとか苦手で疲れちゃうし、事務職はすごく興味が湧かなくて。だから、誰かの相談を受けながら支援するとか、おしゃべりしながら支援するとか、そういう仕事をどんな感じのがあるのかなっていうのを探してる最中で。
参加者からの質問:勉強法・アプリ・日常生活
英語の勉強法とUDブラウザ
英語は中学時代に個別塾で過去問を解き、単語帳を併用しました。教材は「ひとつひとつわかりやすく」シリーズを2〜3周する方法です。英検3級から準2級まではこの方法で対応しています。高校では2級に向けて、オンライン塾で作文の対策を受けました。
単語帳は電車内での扱いが課題でした。ルーペを使うと両手がふさがるため、iPadに撮影した写真を入れて確認しています。
学習の中心にあるのは、小学5年生から使い続けているアプリです。
菊池さん:一番大切だったのが、小学5年生の時からずっと、UDブラウザっていうiPadアプリ、デジタル教科書のアプリがあるんですけど、それをずっと使ってます。小学校5年生から中学校、高校、今は大学もUDブラウザを使ってます。
UDブラウザは、慶應義塾大学の研究室が開発した教科書・教材閲覧アプリです。文字サイズや配色を変更でき、読み上げにも対応しています。
スマホの活用とおすすめアプリ
スマホを持ち始めたのは中学入学の少し前です。小型のルーペと、画面全体を拡大する設定を併用しています。iPhoneでは3本指で2回タップすると画面が拡大されます。
遠くのものは写真に撮って確認する方法が中心です。以前はiPadを使っていましたが、持ち歩きの負担からスマホに切り替えました。
移動中に使っているのが、目的地に近づくと通知するアプリです。
菊池さん:「ツクツク」っていうアプリ、行きたい駅を設定しておくと、何キロメートル先で設定して、近づくと通知をしてくれて分かるんですよ。3キロメートル圏内とかに設定しとくと、だいたい1駅か2駅くらい前に通知が来てくれるので。その時に「じゃあ通知が来たから放送に集中しよう」ってなって、放送に集中して聞き逃さないようになりました。
座談会では、弱視の当事者が開発した拡大鏡アプリ「ミテルンデス」の紹介もありました。撮影した画像が一定時間で自動削除される仕組みです。
乗り過ごし通知アプリ「ツクツク」の詳細はこちら(iOS向け)
日常生活で大変なこと、なんとかなること
中学校までは徒歩で通学していました。高校からは電車とバスを使っています。中学生のころは一人で公共交通機関を使うことが考えられなかったといいます。練習を重ねて自信がついてきました。
新宿駅の乗り換えは、1時間かければ必ずたどり着けると話しています。一人での買い物にはまだ不安が残るそうです。
友人との関係については、一方通行ではないことを強調しています。
菊池さん:私、結構支えられてるだけじゃなくて、お互い、私も勉強を教えるし、あっちは他の日常のことで助けてくれるしって感じかもしれないんですけど、お互い助けてもらって。
弱視の体験談が届きにくいという課題
進学先を考える段階で参考にできたのは、弱視学級で知り合った先輩1人だけでした。
菊池さん:だから受験、ずっと一般で受験してるんですけど、そういう先輩を一人しか知らなくて、その人以外の道を知らなかったからこそ、多分私はその人と同じ道を行きたいなって思っちゃったっていうのもあるんですけど。
Vリーチを知ったのは高校3年生で、受験が終わったあとでした。もっと早く知っていれば、先輩とのつながりを増やせたと振り返っています。
弱視で学ぶ人へのメッセージ
菊池さん:私もそうだったんですけど、弱視の人がどんな感じで学校時代を過ごして、どんな感じの仕事に就くのかとか、あんまり情報が、私が取れてないだけかもしれないんですけど、あんまり情報を得られなくて。すごい不安かなって思っちゃうかもしれないんですけど、保護者の方とかも。
菊池さん:でも今のところ私は意外といけてるし、結構周りの方のサポートも手厚いことが、多分ちゃんと自分で選べば手厚いので、そんなに不安にならなくて大丈夫なのかなって思ってます。
まとめ:配慮の実績を積み上げて、進路の選択肢を広げる
菊池さんが小学校から大学までに取った行動には、いくつかの共通点があります。
- 相談先は校内だけとは限りません。中学校と高校では、配慮に詳しい教員が校内にいませんでした。小学校の弱視学級の教員と、弱視学級で知り合った先輩が相談先になっています
- 入試の時間に合わせた練習が有効です。定期テストが無制限でも、入試の延長は1.5倍です。この差を早めに把握し、1.5倍の時点に印をつける練習を中学3年から始めています
- 支援体制は進学先を絞る基準になります。都立高校を第一志望にしたのは、配慮の申請が通りやすいという判断からです。大学選びでは、国家資格が取れることと障害学生支援室があることを条件にしました
- 道具は場面ごとに変えて構いません。中学校では遠くを拡大読書機、手元をルーペと書見台に分けました。大学では移動が多いため、普段はiPad、試験は拡大読書機に切り替えています
弱視の体験談が届きにくいという課題について、菊池さんは自身も情報を得られなかったと話しています。そのうえで、周囲のサポートは自分で選べば手厚いと振り返っています。
次回のオンライン座談会に参加するには
EduLumeでは、視覚障害のある学生・先輩・保護者が語り合うオンライン座談会を定期的に開催しています。次回の開催日程・テーマ・申込方法は、公式LINEで案内しています。

