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【オンライン座談会】全盲・弱視の先輩3人が語る音楽大学への進学ルート

2026 7/12
活動・体験レポート
2026年7月12日
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目次

  • ・この記事でわかること
  • ・座談会の開催概要
  • ・登場する先輩の紹介
  • ・音楽を専門的に学ぶ2つのルート
  • ・高等部音楽科の受験内容(3人の受験当時の体験から)
  • ・体験談① 小汐 唯菜さん:練習嫌いだった中学生がソロリサイタルを開くまで
  • ・体験談② 長谷川 百合さん:中途失明した私が音大・大学院に進んだ道のり
  • ・体験談③ 田中 綾乃さん:演奏家だけじゃない、音楽と生きる道を探して
  • ・音楽の専門科目で大変だったこと
  • ・まとめ:自分らしい「音楽との関わり方」を探してほしい

この記事でわかること

音楽を専門的に学びたい、視覚障害のある小・中・高校生と保護者・教育関係者向けの記事です。座談会に参加した音大生・大学院生・社会人の3人の実体験から、音楽科の受験・大学での配慮・卒業後のキャリアがわかります。

座談会の開催概要

イベント名第2回 先輩に聞いてみよう!~「視覚障害×音楽進学」高校・大学受験からその先のキャリアまで~
開催日2026年3月6日(金)19:00〜21:00
開催形式オンライン(Zoom)
テーマ視覚障害のある学生の音楽進学と卒業後のキャリア
参加者視覚障害のある音大生・大学院生・社会人の3名

登場する先輩の紹介

小汐 唯菜(こしお ゆいな)さん/国立音楽大学 演奏・創作学科 声楽専修 3年

千葉県出身。生まれつき視覚障害があり、点字を使用しています。光や前にものがあるのがぼんやりわかる程度の見え方です。眩しさが苦手なため、遮光メガネを着用しています。小学5年生から千葉県立千葉盲学校へ転校しました。中学部から筑波大学附属視覚特別支援学校へ進学し、高等部音楽科を卒業後、国立音楽大学へ進学しました。2020年度から野村学芸財団奨学生です。2021年に東京2020パラリンピック閉会式に出演しました。大学2年生の3月に初のソロコンサートを開催しています。

長谷川 百合(はせがわ ゆり)さん/東邦音楽大学大学院 音楽研究科 フルート専攻(修士課程)

東京都出身。小学4年生の秋、薬のアレルギーによる固定薬疹で突然失明しました。中学から盲学校へ進学し、点字と白杖の使い方を学びました。中学2年生からフルートを始めています。高校(東京都立文京盲学校)から音大受験に向けた本格的なレッスンを開始しました。武蔵野音楽大学を経て、現在は東邦音楽大学大学院に在籍しています。点字を使用しています。

田中 綾乃(たなか あやの)さん/日本音楽療法学会認定音楽療法士・社会人1年目

富山県出身。生まれつきの弱視で、拡大文字(墨字)を使用しています。視力は0.06程度、文字サイズは22ポイント程度です。小中学校は地元の盲学校に通いました。高校から筑波大学附属視覚特別支援学校高等部音楽科へ進学しています。国立音楽大学音楽療法専修を卒業後、同大学コミュニティ音楽コースを修了しました。現在は会社員として週5日フルタイムで働きながら、音楽療法士・音楽講師としても活動しています。

音楽を専門的に学ぶ2つのルート

視覚障害のある人が音楽を専門的に学ぶには、大きく2つの方法があります。

ルート① 筑波大学附属視覚特別支援学校 高等部音楽科で3年間学ぶ

専門的な知識を持つ教員が多く、音楽の基礎を3年間かけて体系的に学べる環境です。中学部からの在籍者は「内部推薦制度」を利用して受験することもできると、参加者は話しています。また「普通科選択音楽」という制度もあります。普通科に在籍しながら、音楽科の教員からピアノや声楽のレッスンを週1回受けられる制度です。

筑波大学附属視覚特別支援学校の詳細はこちら

ルート② 他校に在籍しながら外部で実技を磨いて音大を受験する

盲学校などに在籍しながら、ピアノ・声楽・ソルフェージュなどを外部の教室で並行して学び、音楽大学を受験する方法もあります。長谷川さんはこのルートで武蔵野音楽大学に進学しました。

高等部音楽科の受験内容(3人の受験当時の体験から)

小汐さん・田中さんが受験した当時の内容を紹介します。試験内容は年度により変わる可能性があるため、受験の際は必ず最新の募集要項を確認してください。

実技・面接

専攻楽器または声楽の実技と、面接が行われたといいます。

楽典

楽譜に書かれた音の高さ・長さ・強弱・休符など、音楽の基本的なルールが問われたと参加者は振り返っています。例として「ニ長調の音階を臨時記号を用いて書きなさい」といった問題が出題されたそうです。速さや強弱を表すイタリア語の記号(例:Allegroは「速く」)も出題範囲に含まれていました。

聴音

参加者の受験時は、以下の3種類が出題されたといいます。

  • リズム聴音:4小節のリズムをピアノで聴いて楽譜に書き取る。音はすべてラの音で演奏される
  • 和声聴音:3つの音でできた和音(3和音)をピアノで聴いて楽譜に書き取る
  • 単旋律聴音:8小節のメロディを聴いて楽譜に書き取る。前半・後半に分けて複数回演奏される

音楽以外の科目

国語・英語・社会は普通科と同じ問題だったと話しています。音楽の勉強と並行して、普通科の科目も継続して学んでおくことが重要です。

体験談① 小汐 唯菜さん:練習嫌いだった中学生がソロリサイタルを開くまで

声楽を本格的に目指したきっかけ:友人の母の発表会を見て「自分もあんな風に歌いたい」と思った

小汐さん:5歳からピアノと歌を習っていたんですが、ピアノの練習が嫌いで、なかなか上達しませんでした。本格的にやりたいと思い始めたのは小学4年生の頃です。友達のお母さんの声楽発表会を見に行ったら、いつも話している人とは雰囲気が全然違って。自分もあんな風に歌えたら楽しいだろうなと思いました。それから、声楽を教える教室に移りました。

点字楽譜を始めたのは中学2年生の11月から

小学生から中学2年生の途中まで、曲を覚えるときは先生の演奏を録音して耳コピしていました。中学2年生の11月からは、筑波大学附属の「音楽科希望生」制度を利用しました。週数時間の点字楽譜読み・ピアノ・声楽のレッスンを受け始めています。

内部推薦制度で高等部音楽科へ進学

中学部から筑波大学附属に在籍していたため、内部推薦制度を利用して受験しました。中学1年生から3年生前期までの成績評定の平均と、3年次の校内模擬試験の音楽科目の成績が基準だったと振り返っています。

高校3年間:コロナ禍の中でも音楽の基礎を積んだ

2020年度入学のためコロナ禍と重なり、オンライン授業になる時期もありました。それでも先生方のサポートのもと、通常授業を受け続けました。「3年間で音楽の基礎をみっちり学んだことで、大学に入ってから、あの時頑張っていてよかったと思えることがたくさんあった」と振り返っています。

大学受験:配慮申請書を担当教員と一緒に作成した

受験校を決めたのは高校3年生の7月で、受験は11月でした。担当教員と一緒に、大学への配慮申請書を作成して提出しています。申請内容は点字受験・1.5倍の時間延長・別室受験などです。合格後は自分で大学側と交渉し、入学相談の日程調整や、年末年始を挟む入学前課題の締め切り延長なども申請しました。

奨学金:貸与型と給付型の両方を利用している

日本学生支援機構の第一種奨学金(無利子・貸与型)と、野村学芸財団の給付型奨学金を受けています。給付型については「音楽科目だけでなく普通科目の成績も落とさないようにしていたことが関係しているのではないか」と振り返っています。

日本学生支援機構の貸与奨学金の詳細はこちら

野村学芸財団の詳細はこちら

大学での点字楽譜:3つの点訳ボランティア団体に依頼先を使い分けている

点訳に時間がかかるため、楽譜・日本語・外国語(イタリア語・ドイツ語など)の種類ごとに依頼先を分けています。レッスン曲は長期休み中に点訳を依頼します。届いたら早めに譜読みを始め、レッスン当日には歌詞だけ見ながら歌える状態にして臨むそうです。

ソロコンサートを開催し、年間8〜9回の本番に出演

大学2年生の3月、地元の視覚障害者協会からの依頼で初のソロコンサートを開催しました。曲紹介のMCも自分で原稿を作って覚えました。現在は学内外合わせて年間8〜9回の本番に出演しています。

後輩へのメッセージ

小汐さん:今という時間を大切に、手いっぱい勉強してほしいです。数年後、あの時頑張っていてよかったと思える日が必ずきます。

体験談② 長谷川 百合さん:中途失明した私が音大・大学院に進んだ道のり

失明したときのこと:音楽との出会いが転機になった

長谷川さん:小学4年生の秋に、薬のアレルギーによる固定薬疹で突然目が見えなくなりました。手術のあとも、毎日とても辛い気持ちが続いていて。転機になったのは、病院の先生からいただいたチケットで、バイオリンのチャリティーコンサートに母と行ったことです。聴いているうちにだんだん癒されて、終わった頃には音楽っていいなという気持ちになっていました。音楽が人を癒すことを実感して、それまで習っていたピアノを再開したんです。

中学時代:白杖への抵抗から受け入れへ

中学から盲学校へ進学し、点字と白杖の使い方を学びました。最初は白杖を使うことに強い抵抗感がありました。周りの友達も白杖を使っていることに気づき、「見えないのは自分だけじゃない」と感じてから、少しずつ受け入れられるようになったと振り返っています。中学2年生からは、母親の「音楽なら見える・見えないに関係なくできる」という勧めでフルートを始めました。

高校〜大学受験:先生探しから始めた音大受験

高校(東京都立文京盲学校)から、音大受験を本格的に視野に入れ始めました。受験には師事する先生を明示する制度があったため、先生探しから始めています。武蔵野音楽大学のオープンキャンパスでフルートの先生から名刺をもらい、そのまま個人レッスンをお願いしました。点字楽譜とソルフェージュは、視覚障害のある演奏家の先生のもとへ毎週土曜日に通い、2時間かけて学びました。

高校3年次の校内推薦では「成績が足りない」「大学についていけない」と言われ、推薦をもらえませんでした。それでも一般入試で武蔵野音楽大学に合格しています。

大学時代:合奏の授業が一番大変だった

コロナ禍のため、前半2年はオンライン、後半2年は対面での授業でした。フルートレッスン・副科ピアノ・西洋音楽史・語学・教職科目など、幅広い授業を受けました。

長谷川さん:一番大変だったのは合奏(フルートオーケストラ)の授業です。他の学生は3週間前から楽譜を練習できるのに、点訳に時間がかかるので、みんなについていくのが難しくて。座るだけになってしまった日も多かったんですが、最後はみんなと一緒に演奏できて達成感がありました。

また、音楽の世界史の授業では世界史の知識が必要でした。「高校時代にもっとちゃんと勉強しておけばよかった」と後悔した経験から、中高生のうちに世界史を学んでおくことを勧めています。

教職課程も修了し、中学・高校の音楽教員免許を取得しました。授業で中学校の音楽教科書(1〜3年)が必要になった際は、友達に使用箇所を教えてもらいました。そのうえで、必要な部分だけ点訳ボランティアに依頼しています。音楽の先生を目指す場合、中学の音楽教科書は処分せず手元に残しておくとよいと話しています。

大学院での生活

現在は週3回通学し、残りの時間は自宅で練習しています。大学時代に比べて授業数が減り、フルートの練習に集中できているそうです。大学院では、研究したい曲についての論文を執筆して修了します。今後は留学も視野に入れています。

後輩へのメッセージ

長谷川さん:障害があるから音楽はできないと思わないでほしいです。音楽が好きという気持ちと頑張りたいという意思があれば、専門的に学べます。演奏家を目指すだけでなく、大学院進学や留学という選択肢もあります。

体験談③ 田中 綾乃さん:演奏家だけじゃない、音楽と生きる道を探して

音楽療法との出会い:「音楽×人を助ける仕事」が自分のやりたいことだと気づいた

田中さんは生まれつきの弱視で、小中学校は地元の盲学校に通いながらピアノを続けました。

田中さん:中学生のとき、将来はカウンセラーになりたいと考えていました。そんなときに「音楽療法」という言葉に出会って、音楽と、人を支える仕事の2つを同時に実現できると気づいたんです。

音楽療法とは、音楽を聴く・演奏する・作るなどの活動を通じて、病気や障害のある人のリハビリや社会参加を支援する専門職です。日本音楽療法学会が認定する資格があります。

日本音楽療法学会の詳細はこちら

音楽科を選んだ理由と高校時代

音楽療法士の資格を取るには音大・専門学校への進学が必要なため、筑波大学附属視覚特別支援学校高等部音楽科を受験しました。入学後は、演奏一本を目指す学生が多い環境の中で「自分も演奏家を目指すべきか」と迷った時期もありました。真逆の方向で頑張ってみたことで「本当に自分がやりたいことが見えてきた」と話しています。最終的に、音楽療法士という当初の目標に戻りました。

大学受験:自己推薦入試で国立音楽大学へ

受験方法は自己推薦入試(英語・国語なし)でした。グループディスカッション・学習計画書・将来の夢についての論文を提出する形式です。大学を選んだ理由は2点あったと話しています。音楽療法士の資格が取れることと、視覚障害のある先輩の前例があり学びやすい環境だと感じたことです。

大学時代:音楽療法の授業内容と学外コミュニティ

音楽療法の授業では、ピアノ・歌の実技に加えて、コードネームを使った弾き語りを学びました。学外施設での音楽療法実習や、医学・教育学などの学術的な科目もありました。

卒業後のキャリア:会社員×音楽療法士という選択

卒業が近づいたとき、音楽療法だけで生活することへの不安から就職活動を決めました。障害のある人向けの転職・就職支援サービスを利用し、自己紹介シートを作成して複数の企業に応募しています。現在は事務職として週5日フルタイムで働いています。土日には、精神疾患のある方向けの音楽療法(月1回)と、障害のある方へのオンラインピアノ・声楽レッスンを行っています。

仕事と音楽活動の両立について、田中さんは前向きに捉えています。

田中さん:生活の基盤としての仕事があるから、安心して音楽ができます。逆に、音楽という得意なものがあるから、平日の仕事も頑張れる。お互いに支え合っています。

大学卒業後は、国立音楽大学の「科目履修生」制度を利用してコミュニティ音楽を2年間学び、知識の幅を広げました。

後輩へのメッセージ

田中さん:音楽との関わり方は、演奏家だけではありません。研究者・指導者・クリエイターなど、いろんな角度で音楽と関わる道があります。自分が音楽を大好きなままあり続けられる選択をしてほしいです。

音楽の専門科目で大変だったこと

3人が共通して挙げたのは、「点字楽譜」と「聴音・ソルフェージュ」の難しさでした。それぞれの見え方によって、苦労した点も工夫の仕方も異なります。3人の言葉を紹介します。

小汐さん:点字楽譜は音と歌詞を同時に確認できないので、まず音だけを読んで覚えて、その後に歌詞を覚えるという2段階でやっています。ピアノの楽譜は右手・左手・和音と情報量が多くて、慣れるまでは1小節読むだけで頭がいっぱいになりました。

長谷川さん:私は聴音の書き取りが大変でした。点字は裏から書くので、確認するときに紙を裏返す手間が加わるんです。先生が演奏するペースに追いつけなくて、どんどんずれていってしまって。

田中さん:私は視野が狭いので、音符のリズムと音の高さを同時に視界に入れられないんです。楽譜を分解しながら読む必要があって、初見演奏ができないので、何の科目でも暗譜が必要でした。コツを見つけて乗り切っていくので、自分なりのやり方を探していくことが大事だと思います。

まとめ:自分らしい「音楽との関わり方」を探してほしい

3人の体験談から見えてきたのは、音楽との関わり方は一つではないということです。

  • 音楽科の受験は早めの準備が有効です。点字楽譜・ソルフェージュの習得には時間がかかるため、中学生のうちから少しずつ始めておくとよいと参加者は話しています
  • 普通科の勉強も音楽の勉強も、両方が後から自分を助けてくれます。音楽の世界史・教職課程・奨学金など、音楽以外の知識が必要になる場面は多くあります
  • 演奏家以外にも、音楽と生きる道はたくさんあります。音楽療法士・指導者・研究者・クリエイターなど、音楽を軸にしたキャリアの形は一つではありません

「障害があるから音楽は難しい」ではなく、「自分がどんな形で音楽と関わり続けたいか」を考えるところから始めてみてください。

活動・体験レポート
#オンライン座談会レポート #合理的配慮 #大学生・専門学校生 #進学 #高校生
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